お線香編

お線香の基礎知識

お線香の原料

お線香はクスノキ科の喬木、椨(たぶ)の木の樹皮を乾燥させて粉末にしたものを基材に使います。椨の粉末は焚いた香りも邪魔にならず、配合した香料にも良く合います。それに香りの良い漢方生薬や香料を調合帳に従って配合し、湯又は水を加えて粘土状に練り上げ、押し出し機で細い筋状に成形します。真っすぐに乾燥させれば出来上がりです。

椨の粉末や香料の配合割合、加える湯の量で灰の落ちる具合が変わります。およそ2センチ程度の長さで灰が落ちなければなりません。なぜなら、あまりに長いと香炉の外へ灰がこぼれてしまうからです。また、燃焼速度も変わるので、決められた時間で燃え尽きるように調整しなければなりません。燃焼時間が短くてもいけませんし、逆に長すぎる場合は気温の低い季節になると、途中で立ち消えすることがあります。

お線香の強度を上げようとすると灰が長くなり、燃焼時間も長くなります。反対に灰を短くすると強度が低下し、燃焼時間が短くなる傾向があります。相方を両立させるバランスが難しいのです。お線香は炎を上げて燃えません。しかし、それでも消えない微妙な燃焼状態を続ける必要があります。

お線香が薫るしくみ

お線香を焚くと香煙が立ち昇ります。薫りの成分は香煙の粒子に付着してお部屋に広がり、壁面などに停まります。焚き終わった後でもその粒子から少しずつ薫り成分が発散を続けます。これが他の室内芳香剤にはない「残り香」といわれるお香の優れた特徴です。

お香は薫じるといいます。加熱することによって薫りが発散するわけです。お線香を焚いて薫りが発散する原理は、香炉でお香を薫じるのと全く同じであることがわかります。

けむりの少ないお線香

最近はけむりの少ないタイプのお線香が重宝されています。

けむりの少ないお線香には「活性炭粉」、「木炭粉」などを配合して造ります。着火した木炭からけむりが出ないのと同じなのです。

お線香ができるまで

1

原料

お線香に使われる原料には、生薬系の原料と香木系の原料があります。

2

調合

父祖伝来の調合帳には、各漢方原料の割合が記されています。現在では調合帳に基づき、コンピューター制御の全自動調合システムで各香料を計算します。

3

練り

ふるい終わった原料と基材の椨皮粉を混練機に入れ、お湯を加えて練り上げます。

4

押し出し・盆切り(ぼんきり)

油圧式の押し出し機で線香を押し出します。そして、押し出したお線香を盆板(ぼんいた)で仮受けします。

5

生付け(なまつけ)

盆板に取った線香を、乾燥板に隙間なく真直ぐに並べます。

6

胴切り(どうぎり)

線香に定規を当てて、既定の寸法にカットします。

7

乾燥

線香がのった乾燥板を積み上げて乾燥させます。業界に先駆け昭和54年に発明した「積層乾燥法」を採用しています。
※「積層乾燥法」の詳しい説明はこちら

8

把上げ(たばあげ)

乾燥の終わった線香を規定重量の把にまとめます。

9

貯蔵

通常、高級品ほど長時間寝かせておき、香りが安定するのを待ちます。

10

仕上げ

バラ詰め、把詰、進物用などそれぞれの用途に応じて仕上げていき、箱詰めしていきます。

お線香の不適切な使い方 (火移りの場合)

Case1

お客様から頂く苦情の中に、「お線香が火の着いた状態で香炉の外に落ちる不具合」があります。「途中でお線香が弾けて、火が着いたまま落ちた。」と表現される方もいらっしゃいます。そこで当社では、その再現実験を通じて、原因を探ってみました。

01

3本(複数本)のお線香を束ねるように持って、ローソクの炎で着火する場合、全てのお線香の先端に十分に着火していない場合があります。

02

その状態で香炉の灰に立てますと、十分着火していないお線香の筋は燃焼が進まず、少し燃えた所で消えることがあります。

03

しかし、それ以外のお線香は次第に燃焼が進み、その熱で燃えていないお線香の側面を黒く焦がして行きます。

04

燃焼が進んで行くと、最もお線香の筋同士が接近した個所(途中または灰の中)で、燃えていない線香の筋の途中に火が移ります。

05

そして、その部分が燃えて灰になると、そのお線香の上部が火の着いた状態で倒れ、香炉の外に落ちてしまいます。この時、香炉の縁にお線香が当たると「パチッ」とかすかな音がします。これを、お線香が弾けた音だと思われるのでしょう。

この不具合を防止するためには、複数本のお線香を立てる時、1本1本を離して立てるように注意すれば良いでしょう。

Case2

灰の中に残ったお線香の火によって、次に立てたお線香の下部から燃える事があります。
これはお通夜や法事で何人もの方がお線香を続けて立てる時に起こる不具合です。

 
01

何人ものお方がお線香を立てている内に、香炉の灰が温まって来ます。そのような条件(灰が軽いなど)が整うと、灰の中でもお線香の燃焼が続く場合があります。

 
02

次の方が灰の中の残り火に気付かず、お線香を立てますと、その下端に着火し、燃焼が下側からも始まります。

 
03

そして、根元にも火の着いたお線香が倒れます。このようにして香炉の外に火の着いたお線香が落ち、畳や経机を焦がす不具合となります。

この不具合を防止するためには、灰の中にお線香の火が残っていないか、十分確かめて立てる事が肝要です。

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